だから聖女はいなくなった
キンバリーはカップに手を伸ばした。その様子を、サディアスはしっかりと見つめている。
兄は痩せた。やつれたとも言う。それはラティアーナがいなくなってからだ。
「神殿としては、やはり聖女は竜の側にいてもらいたいというのが本音のようです。それから、兄上の寄付金ですが……。それによって神殿の食事が改善されていたのも事実です。厨房も確認してきましたし、巫女たちからも話を聞きました」
その言葉を耳にした途端、キンバリーのカップを持つ手がぴくっと震えた。それをサディアスは見逃さなかった。
「金は適切に使われていたということか?」
「少なくとも、それによって食事が改善されたのは事実です。ですが、その金の一部から、ラティアーナ様のドレスが仕立てられたのも事実です。王太子の婚約者として相応しい格好をしてほしいというのが、神殿側の考えだったようでして……」
キンバリーがカップを置いた。カチャリと立てた音が、異様に大きく聞こえた。
「つまり、あのドレスはラティアーナが勝手に仕立てたものではないと?」
「そのようですね。どこかで誤解が生じたのですよ。やはり、ラティアーナ様とお話をされるべきでは?」
「だが、肝心のラティアーナがいない……」
兄は痩せた。やつれたとも言う。それはラティアーナがいなくなってからだ。
「神殿としては、やはり聖女は竜の側にいてもらいたいというのが本音のようです。それから、兄上の寄付金ですが……。それによって神殿の食事が改善されていたのも事実です。厨房も確認してきましたし、巫女たちからも話を聞きました」
その言葉を耳にした途端、キンバリーのカップを持つ手がぴくっと震えた。それをサディアスは見逃さなかった。
「金は適切に使われていたということか?」
「少なくとも、それによって食事が改善されたのは事実です。ですが、その金の一部から、ラティアーナ様のドレスが仕立てられたのも事実です。王太子の婚約者として相応しい格好をしてほしいというのが、神殿側の考えだったようでして……」
キンバリーがカップを置いた。カチャリと立てた音が、異様に大きく聞こえた。
「つまり、あのドレスはラティアーナが勝手に仕立てたものではないと?」
「そのようですね。どこかで誤解が生じたのですよ。やはり、ラティアーナ様とお話をされるべきでは?」
「だが、肝心のラティアーナがいない……」