だから聖女はいなくなった
だから彼女を好いていた

1.

 ラティアーナは、三日に一度、孤児院を訪れていた。孤児院は王都の外れにある。
 マザーと呼ばれる女性が、身寄りのない子どもたちを預かって世話をしている。マザーとなる女性も、この孤児院の出身である者が多い。

 ラティアーナが孤児院へ足を運ぶと、すぐに子どもたちに見つかってしまう。

『ラティアーナ様、ご本を読んでください』

 新しい絵本を抱きかかえて、子どもたちはラティアーナに駆け寄った。子どもたちは、それぞれ見たことのない絵本を手にしている。

 この本は、王城から送られてきたものだろう。ラティアーナが定期的に孤児院を訪れていることを知ったキンバリーが、いくつか本を贈ったのだ。
 マザーはすぐにお礼状を書いたが、キンバリーは未来ある子どもたちのためにと、返事をよこしたらしい。

 その話をラティアーナはマザーから聞いた。だが、キンバリーに確かめようとは思わなかった。
 子どもたちはラティアーナのことが大好きである。

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