だから聖女はいなくなった
『きゃ~』
『ラティアーナさまが追いかけてくる~』
『にげろ~』

 子どもたちの元気な声を聞きながら、ラティアーナも一緒に走り回る。
 そうこうしていると、マザーが子どもたちを呼びに来た。

『おやつができましたよ』
『では、そろそろ中に戻りましょう』

 ラティアーナの言葉に従う子どもたちは、一列に並んで中へと戻る。その一番後ろを歩くのはラティアーナだ。

『うわぁ、いいにおい』

 食堂に入ると、ビスケットの甘いにおいが漂っている。

『ラティアーナ様に作り方を教えてもらったんだよ』

 子どもたちはおやつの時間となる。
 それを微笑みながら見送ったラティアーナは、マザーに挨拶をして神殿へと戻っていく。

 彼女が孤児院へくるときは、遠くに神官の姿が見えた。それはラティアーナの護衛だったのだろう。



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