ごじうおん
エナメルの靴をコツコツ鳴らし、鼻歌交じりに改札口を抜ける。

やがて駅長さんの視線に気づき、恥ずかしそうに頬を染めた。


「この服を着るのは久しぶりで、つい…ウキウキしちゃって。嫁入り後は、一度も着せて貰えなかったの。」

「それは良う御座いました。その御洋服は、お流行りの物で?」

「あら!御解りになって?嬉しいわ。」


彼女は、桜色の瑞々しい唇を微笑の形に変えた。
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