秘密の彼氏は、私にだけ甘すぎる
名前で呼ぶって。
今までずっと『長嶺くん』って呼んできたのに。いきなり下の名前を呼び捨てにするだなんて、ハードルが高いよ。
「りーほ。ねぇ、呼んで?」
首を傾げて上目遣いでおねだりする長嶺くんに、私はノックアウトされた。
「う……。しょ、翔也……?」
口に出すも、消え入りそうな声になってしまう私。
「なに、理帆。聞こえないんだけど」
「〜っ」
もう。長嶺くんの意地悪……!
「しょっ、翔也……っ!」
「うん。呼べるじゃない。ちゃんとできた子には、ご褒美をあげるよ。理帆、口開けて?」
翔也に言われたとおり、私が口を開けると。
「はい。あーん」
甘い笑顔とともにチョコレートが唇に運ばれ、鼓動が跳ねる。
「あー……」
照れくささを感じながらも、私は彼の指からパクリとチョコレートを食べる。
「美味しい? 理帆ちゃん」
「うん。美味しい」
「良かった。理帆は甘いもの好きだもんね」
嬉しそうにまたひとつ差し出され、ドキドキしながら食べさせてもらう。
「俺の分も食べて良いよ、理帆ちゃん」
チョコレートは、翔也みたいにめちゃくちゃ甘かった。
「あのね、翔也。私からもお願いがあるんだけど」