秘密の彼氏は、私にだけ甘すぎる


開いた窓から、校庭の金木犀の甘い香りが風に乗って運ばれてくる。


この甘い香りを嗅ぐと、翔也と両想いになった日のことを思い出す。


「お願い?」

「うん。あのね……」


私は翔也と交際して半年が過ぎたあたりからずっと思ってきたことを、初めて口にする。


「私たちが付き合って、もうすぐ1年になるんだし。そろそろ翔也と付き合ってること、友達や周りの人に言ってもいい?」


この1年もの間、学校では他人のフリをして。

こうして昼休みにこっそりと、人気のない旧校舎の空き教室で会う日々を過ごしてきた私たち。


交際期間が1年になるんだし、もうそろそろ周りに言っても良いんじゃないかなと思うんだけど。

ずっと秘密のままじゃ翔也と一緒に登下校したり、制服デートとかもできないよ。


「あー……」


私の言葉に、翔也の顔が明らかに曇る。


「それは……ダメだよ」

「えっ、どうして?」


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