秘密の彼氏は、私にだけ甘すぎる


「……あれ? どうしたの? 白井さん、顔が真っ赤だよ」


チャイムが鳴り、木村さんや果耶たちが自分の席へと戻っていくと、翔也が私に小声で声をかけてくる。


「な、長嶺くんのせいです」

「ふーん。俺のせいなんだ? なんで?」


ニヤニヤ顔の翔也。


「もう。言わなくても分かってるでしょ?」

「えー、分かんないなぁ」

「おーい、授業始めるぞー」


教科担当の先生が、教室へと入ってきた。


すると、翔也が私の手をギュッと握ってくる。


「ちょ、ちょっと、長嶺くん……!」

「いいだろ? 理帆と手、繋ぎたくなったんだよ」

「ええっ」


いくら私たちの席が、窓際の一番後ろだとしても。

こんな手を繋いでいるところを、もし誰かに見られたら……。


「はい、教科書開いて。前回の続きからいくぞー」


先生が授業を開始する。

だけど、翔也はまだ手を離してはくれない。


「俺がこうして手を繋ぎたいって思うのは、理帆だけだから」


私の耳元で、囁くように言う翔也。


「抱きしめたいって思うのも。キスしたいって思うのも。全部、全部、理帆だけ」

「……っ」

翔也が喋るたびに、耳に息がかかってくすぐったい。


「ありがとう。翔也がさっき皆の前で、彼女がいるってハッキリ言ってくれて。私すごく嬉しかった」

「ああ。そんなの、当然だろ?」


私はドキドキしながら、翔也の手をギュッと強く握り返した。

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