秘密の彼氏は、私にだけ甘すぎる


土曜日の正午過ぎ。


──カランコロン。


お店のドアベルが鳴り、店を出て行った若い女性客に私は「ありがとうございました」と明るく声をかける。


私の家は、両親が喫茶店を営んでいる。
静かな住宅街の隅にある小さなお店で、名前は『ホワイト・カフェ』という。


『ホワイト・カフェ』 は、昔ながらのレトロな喫茶店。コーヒーとふわふわのシフォンケーキが人気で、地元のお客様を中心に毎日繁盛している。


「すいませーん」

「はい! 今いきまーす」


私も中学の頃から週末を中心に、店を手伝っている。今日もいつものように、私が接客をしていると。


──カランコロン。


「いらっしゃいま……」


ドアベルが鳴り入店してきたお客様に私は声をかけるも、最後まで言えなかった。


「……理帆」

「翔也。なん、で」


お店にやって来たのは、翔也だったから。

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