秘密の彼氏は、私にだけ甘すぎる
「……何しに来たの? 私いま、仕事中なんだけど」
店内には他のお客様もいるため、小声で話す私。
「ごめん。突然店にまで来てしまって。俺、どうしても理帆と話したかったから」
「私は、翔也と話すことなんてない。だから帰って……っ!」
仕事に戻ろうとした私の腕を、翔也が掴む。
「コーヒー飲みに来たんだ。だから、居ても良いでしょ?」
「……っ」
翔也、そんなふうに言うなんてズルい。
お店にとっては、たとえどんな人でも大切なお客様だから。私には、追い返すことなんてできないもん。
「……いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」
「ありがとう」
私は、翔也を店の奥の二人掛けの席へと案内する。
「んー、どれにしようかな?」
席に着き、お店のメニュー表をパラパラとめくる翔也。
「……ねぇ、翔也。今日、部活は?」
土曜日のお昼は、いつも部活があるはずの翔也。そんな彼がここにいるのはおかしいと思った私は、つい翔也に聞いてしまう。
「ああ。部活は、休ませてもらった。俺、今日はどうしても理帆に会いたかったから」