秘密の彼氏は、私にだけ甘すぎる
「休ませてもらったって……そんなのダメじゃない。翔也、もうすぐ大事な試合があるんだよね!? だったら、私に会うことよりもサッカーを優先しなくちゃ!」
さっきまで、翔也と話すのも気まずく感じていたというのに。
そんなことはすっかり頭から抜け落ち、私は彼に声をあげる。
だって私は、今まで翔也が人の何倍も努力していたことを知ってるから。
「……何言ってるの? 理帆にそう言ってもらえて嬉しいけど、俺にとってはサッカーよりも、理帆のほうが大事に決まってるじゃない」
「翔也……」
私は、仕事用のエプロンをぎゅっと掴む。
どうしよう。翔也にそんなふうに言ってもらったのは初めてで。
こんなときでさえ、嬉しいと思ってしまう自分がいる。
「それじゃあ、聞くけど。そんなにも私のことを想ってくれてるのなら、どうして翔也はこの前のデートのとき『付き合ってない』って木村さんたちに否定したの? 私、あのときは本当にショックで……」
今でもあの日のことを思い出すと、まだ胸が疼く。
「そうだよね。あのときは、本当にごめん」
翔也が、私に頭を下げる。
「ねぇ。そもそもどうして翔也はそこまでして、私と付き合ってることを周りの人に言いたくないの?」
「それは……」