秘密の彼氏は、私にだけ甘すぎる
「すいませーん。注文いいですか?」
「あっ、はい。すぐいきます!」
声をかけてきた年配のお客様に、私は慌てて返事をする。
やばい。仕事中なのもすっかり忘れて、翔也と話し込んでしまってた。
「ごめん、翔也。私、仕事に戻るね」
「うん。理帆、頑張って。また後で」
頷く私に、翔也がヒラヒラと手を振ってくれる。
「……ねぇ。さっき話してたイケメンって、理帆の知り合い?」
オーダーを受けた私がカウンターのほうへと戻ると、10歳年上の姉・白井環奈が声をかけてきた。
社会人である姉は普段は県外で一人暮らしをしているけど、今日は久しぶりに実家に帰ってきていて店を手伝ってくれている。
「あっ! もしかして理帆の彼氏とか?」
私たちの関係を知らない姉が、ニヤニヤしながら小声で聞いてくる。
「お姉ちゃん! かっ、彼氏って。違……」
「やだなぁ、赤くなっちゃって。そんなんじゃ、彼氏だって言ってるようなもんじゃん」
「まぁ……そんなところかな」
「ふふ、照れちゃって。もう、理帆はほんとに可愛いんだから」
私の頭を、両手で思いきり撫でてくるお姉ちゃん。
「おーい、理帆。ちょっといいか?」