秘密の彼氏は、私にだけ甘すぎる
「何? お父さん。どうしたの?」
裏でコーヒーの用意をしていたお父さんに呼ばれ、私はそちらへと向かう。
「今日は、朝から予想以上にお客さんが来てくれたから。コーヒーの豆がいつもよりも早く切れそうでな。悪いけど、店まで買いに行ってくれないか?」
「えっ、それは大変! 分かった。他に何か必要な物はある?」
「そうだなぁ。あとは……」
お父さんから買うものを聞いた私は仕事用のエプロンを外し、財布を持って店を出る。
「それじゃあ、行ってくるね」
お店までは、ここから歩いて15分ほどの所にある。
今日は土曜日で喫茶店にはまだまだお客様が来られるだろうから、急がなくちゃ。
* * *
「ありがとうございましたー!」
必要なものを買った私は、お店を出て早足で街中を歩く。
お父さん、待ってるだろうし。
翔也にも……早く会いたいし。
そう思い、私が歩く速度を更に早めたとき。
「ちょっと、お姉さん」
突然私の前に、ガラの悪そうな男が三人立ちはだかった。