秘密の彼氏は、私にだけ甘すぎる


「……うぅ。長嶺さん、ひどいよ」


俺は真っ暗な自分の部屋で、一人うずくまる。

悲しくて、苦しくて。涙がとめどなく溢れる。


この家にはきっと、俺の居場所なんてない。


潤が生まれてから、そう思うことが増えた。


母の連れ子である俺だけが、この家では他人みたいで。居心地が悪くて。


家にいたくない。あんな息苦しい家には帰りたくない。


常々そう思っていた俺は、中学生になると家にほとんど帰らなくなった。


優秀であることを望む継父に反抗したくて。俺は髪を金色に染め、耳だけでなく鼻や顎にもピアスをつけるようになった。


学校もサボって、毎晩のように遊び歩いて。イライラすると、すぐ誰かを殴り発散する。


そんな毎日を送っていた俺に声をかけてきたのが、ある不良グループのリーダーだった。

俺はそのリーダーとウマが合い、そいつのグループの一員となった。


それからも俺は、誰彼構わず片っ端からケンカする日々。


「ほんと、ミネには叶わねぇわ」

「やっぱすげぇな、お前」


ケンカに勝って強くなっていくうちに、俺はいつしか不良グループのトップにまで登りつめた。


だが、色んな奴らと毎日のようにケンカしボコボコにしていたからか、俺のことを恨む奴もいたのだろう。


中学2年の冬。

あれは、冷たい雨が降りしきる夜だった。


俺が一人、いつものように街を歩いていると。


──ドカッ!


いきなり背後から、不良の集団に襲われた。

< 56 / 66 >

この作品をシェア

pagetop