秘密の彼氏は、私にだけ甘すぎる
「……うぅ。長嶺さん、ひどいよ」
俺は真っ暗な自分の部屋で、一人うずくまる。
悲しくて、苦しくて。涙がとめどなく溢れる。
この家にはきっと、俺の居場所なんてない。
潤が生まれてから、そう思うことが増えた。
母の連れ子である俺だけが、この家では他人みたいで。居心地が悪くて。
家にいたくない。あんな息苦しい家には帰りたくない。
常々そう思っていた俺は、中学生になると家にほとんど帰らなくなった。
優秀であることを望む継父に反抗したくて。俺は髪を金色に染め、耳だけでなく鼻や顎にもピアスをつけるようになった。
学校もサボって、毎晩のように遊び歩いて。イライラすると、すぐ誰かを殴り発散する。
そんな毎日を送っていた俺に声をかけてきたのが、ある不良グループのリーダーだった。
俺はそのリーダーとウマが合い、そいつのグループの一員となった。
それからも俺は、誰彼構わず片っ端からケンカする日々。
「ほんと、ミネには叶わねぇわ」
「やっぱすげぇな、お前」
ケンカに勝って強くなっていくうちに、俺はいつしか不良グループのトップにまで登りつめた。
だが、色んな奴らと毎日のようにケンカしボコボコにしていたからか、俺のことを恨む奴もいたのだろう。
中学2年の冬。
あれは、冷たい雨が降りしきる夜だった。
俺が一人、いつものように街を歩いていると。
──ドカッ!
いきなり背後から、不良の集団に襲われた。