秘密の彼氏は、私にだけ甘すぎる
「はは。ざまぁみろ、ミネ」
俺を見て笑っている銀髪のこいつは確か……堀川か。俺と何度かケンカしたことのある奴。
「おい、堀川。人が来る。逃げるぞ」
不良たちの姿が遠のいていく。
……くっそ。まさか集団でやられるなんて、完全に油断してた。
今すぐやり返してやりたいが、身体中が痛くて動けない。
俺を殴るだけ殴り、走って逃げていく奴らの背中をただ睨みつけることしかできない。
サァァァ。
降りしきる雨が、どんどん強くなる。
「あら、やだ。ケンカ?」
「怖いわ〜。早く行こう」
道端で血を流して倒れている俺に、通りすがりの人はただ『怖い』と言うだけで。
皆、見て見ぬふりをして通り過ぎて行く。
……ああ。ついに、罰でも当たったか?
中学生になってからの俺はずっと、まともに生きてなかったし。
そんな俺を見て継父は『お前は、長嶺家の恥だ』と心底軽蔑していた。
「……っ、」
意識が、だんだん遠のいていく。
もういっそのこと、ここで死んでもいい。
どうせ生きてたって、この先良いことなんてない。
そう思ったときだった。