出戻り令嬢は、初恋執事に愛されたい。
部屋に入り私はスマホで釣書に書かれた人物を調べ始めた。
「津崎薫さん、津崎貿易の取締役会長……って、六十代後半くらいじゃない?」
津崎貿易は、花山院家が懇意にしている貿易会社でそちらも旧華族だ。一度、若瀬家のパーティーに参加していたはず……挨拶もした。奥さんを亡くして生涯独身を貫くっておっしゃっていたはずなんだけど。
……というか、私二十七よ。お父様と同い年くらいの人と結婚って。それに!優一郎さんは何をしてるんだ!契約結婚する前にした約束を覚えてないんかい!
もう、嫌だわ。離婚後は、ゆっくりと独身生活を満喫しようって思っていたのに。傷心旅行とか行って体を休めようとか考えてたのに……
「……せめて、あわよくば、好きな人に抱かれたいわ」
「結琉さま、好きなお方がいらっしゃるのですか……?」
え、好きすぎて幻聴が聞こえてしまった!?精神的に疲れてるのね……と思ったが一応扉の方を向くとそこには本物の千隼がいた。