出戻り令嬢は、初恋執事に愛されたい。
懐かしい人
私は、身一つで花山院家の車に乗せられて行き先も知らされないまま出発した。そこから三十分が経ち、到着したのは母の所有しているタワマンだった。
「あの、どうしてここに連れてきたの?」
「旦那様の命令ですので。お嬢様にはここに住んでもらうと言っていましたよ。これはカードキーです」
カードキーを受け取ると彼は車に乗り込んでしまい行ってしまった。私はフロントに入り、エレベーターで最上階に上がって降りると正面の扉を開けた。
「……お帰りなさいませ、結琉様」
「千隼!? あなた、なんで」
誰もいないと思っていたのに中にいたのは、元々専属の執事だった千隼だった。確か、三十七歳だったはず……あの頃と同じ優しい笑みを浮かべて出迎えてくれた。でも、なんでここに彼がいるのだろうか。
お父様がこの人を付けるわけないし、お母様かな……。
「奥様から言いつけられまして。またお嬢様のお世話をして欲しいと」
「……そう」
「はい。なのでよろしくお願いします」