最強メイド!おぼっちゃまたちをお守りします!
「いた」

 窓から見て左側に社長室らしい部屋があって、そこ以外は特に何もないホールみたいになってる。
 杏くんはそのホールに後ろ手に拘束(こうそく)された状態でイスに座らせられていた。
 口にはガムテープが貼られているけれど、足は拘束されてなくて自由みたい。
 でも、周りを何人もの男の人に囲まれていて逃げられる状況じゃない。

 座った状態の杏くんは、囲んでいる人達の中の一人・梶くんをずっとにらみつけていた。
 梶くんの存在に柊さんも気づいたみたいで、眉をひそめる。

「この宵満学園の制服を着てる子って……」
「はい、彼が杏くんを連れ去った【朧夜】のヴァンパイアです」

 答えながら私はグッと眉間(みけん)にしわを寄せる。
 数時間前に味わった後悔が胸に広がった。

 でも、今度こそいいようにされたりしないんだから!

 決意を込めて、ビルの三階をにらむ。
 ビルの大きさからして、今まで見た部屋以外はトイレとか階段くらいしかないと思う。
 潜入する前に中の様子を把握(はあく)出来たのは本当に助かった。
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