最強メイド!おぼっちゃまたちをお守りします!
「あーあ、今のはマジの勧誘だったんだけどな。フられちゃったか」

 残念そうに笑った梶くんは、辛そうにしながらもゆっくり立ち上がる。
 まだ立てる力があったなんて。

 私はクロちゃんを構えて警戒態勢を取った。
 手負いの梶くんに何が出来るかってところだけれど、油断は禁物だからね。
 梶くんはそんな私を見て嬉しそうに笑う。

「まあ、簡単には諦めないけど」
「……」

 本当に、何を言ってるんだろう。
 何度誘われたって私がうなずくわけないのに。

「でも今回は逃げるが勝ちかな? 捕まったら元も子もないし」
「逃げられないよ。今他のハンターもここに突入してくるから」
「あ、やっぱり? さっきのはその連絡だったんだ?」

 さすがにそれくらいは気づいていたみたい。
 ヘラヘラ笑っている梶くんは、逃げる手立てでもあるんだろうか?

「それ以上ケガをしたくなかったら大人しく捕まった方がいいと思うけど?」

 警戒したまま捕まることをすすめるけど、彼は二ッと口角だけを上げる笑みを浮かべた。

「ここはケガをしてでも逃げるところだろ?」
「え?」

 ガシャァン!

 聞き返すと同時に、梶くんは近くの窓を割る。
 その行動に驚いている間に、彼は「また会おうな!」と言い残して外に飛び出てしまった。

「なっ!?」

 とっさに追うべき? と考えたけれど、動けそうにないとはいえ犯人たちが床にうずくまる中、杏くんを一人残すことは出来ない。
 私は優先順位を考えて、梶くんを追うのを諦めた。
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