最強メイド!おぼっちゃまたちをお守りします!
「望乃さん!」

 強く名前を呼ばれてハッとする。
 すぐに離れたけれど、やらかしてしまった後だからどう対応すればいいのか分からない。

「す、すみません!」

 とりあえず謝って様子を見ると、貼りつけたような王子様スマイルか無表情しかしない柊さんの顔が物凄く真っ赤になっていた。
 現実逃避(げんじつとうひ)()ねて、珍しいなーなんて思ったけれどそれどころじゃない。
 どうやら私になめられて恥ずかしがってるだけみたいだから、今のうちに誤魔化さないと!

「ごめんなさい、なんかなめたら治らないかなーって思っちゃって!」

 早口でまくし立てると、私はすぐに部屋のドアに向かう。

「さ、そろそろお迎えの車も来ているでしょうし、帰りましょう!」

 このまま誤魔化されてほしいなと思いながら、私はドアノブに手を掛けた。
 でもカチャッとドアを開けようとしたところで後ろから手を突かれバタンと閉じられてしまう。
 後ろから覆いかぶさられているような格好。
 その状態で「ちょっと、待って」と静かに、でもハッキリとした声をかけられ柊さんが誤魔化されてくれなかったことを知った。

 ど、どどどどうしよう!?
 心臓がドックンドックンと大きく鳴って、怖くて後ろを向けない。
< 31 / 127 >

この作品をシェア

pagetop