唯一の血である私はご主人様から今日も愛を囁かれています
「本気じゃないくせに」


「当然だろ。俺の可愛いメイドに傷が残ったら大変だし。まあ軽い傷くらいなら、俺が舐めて治してやる」


どうやら吸血鬼が舐めれば、人間の傷はある程度回復するようで。さすがに治せるのは軽症程度だけど。


「ツバでもつければ治るから舐めなくていい」


「雪璃は男前だなぁ。俺に舐められるのは嫌か?」


……嫌じゃない。


「普段はクールだけど、俺が口説くとすぐに女らしい顔をするもんな。そういうところも含めて、俺はお前のこと愛してるぞ」


―――チュ。

私の頬にキスが落とされた。


「あ、愛してるとか簡単に言わないで」


なんでそういうこと、恥ずかしがらずに言えるわけ?


チャラ男のくせに。他の子の血を吸ってるくせに。


本当は私じゃなくていいんじゃないの?


「本当のことだぞ。それに勘違いしてないか?」


「勘違い?」


雪璃(せつ)は人間だ。俺が飲みたいときに毎回吸血してたら、血が足りなくなって貧血で倒れる。雪璃の体力を回復させるためにも違う女の血は必要だろ?」


「私のために?」


「それもあるけど、俺が他の子を吸血すればヤキモチ妬くかなって」


「……バカ」


「ひどくね!?」


でも、スキ。そんな雷雨(らいう)様が私は好き。
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