星が代わりに泣いてくれるから
某邦ロックアーティストの曲が流れて、企画は終了した。懐かしいと思う前に、私は信号待ちの時なにも実っていない薄い腹に手を置いた。

壁はたとえ薄くても壁はしっかり壁だった。赤ちゃんがその壁を飛び越えてくることはない。ベッド際に置かれていたその最薄と書かれたパッケージの箱が何度恨めしかったかわからない。


でもそのことについて直接触れたことはない。そろそろつけなくてもいいんじゃない?くらいでしか伝えていなかった。たまに赤ちゃんがほしいといったこともあったが、そんなしっかり伝えたことはなかった。

レンとは学生の時から知り合ってたというわけでない。友達の紹介でそのあととんとん拍子に結婚した。別に結婚を急いていたわけでなかった。特に結婚前は揉めたことなどなかった。

そのつけが今になって回ってきたと痛感している。レンに言いたいことが言えない、伝え方がわからない。これらはセリカの致命的な短所である。

レンの性格は真面目で、ただ一度崩れると立て直すのに時間がかかるタイプだった。一度、セックスが痛いと言ったことがあった。本当に申し訳ないと謝られてからも落ち込んでその日どう話しかけていいかわからなかった。それが一日ですめばよかったが、立ち直るまでに数日かかった。
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