星が代わりに泣いてくれるから
『はい…』
『っ、セリカ今どこにいるんだ』
『…』
その声は焦り、安堵、苛立ち複雑に絡まり合っていた。
レンは心配してくれたのね。セリカはそれに気付いて少しだけ嬉しくなった。
ただレンはその時、何も返事をしなかったことにやや口調を荒げる。
『聞こえているか』
『…』
このまま家に帰って、彼と心からぶつかり合って話せるのだろうか。
あのいつもの小さなリビングでできなかったことを、またできるのだろうか―――?
疑問が押し出すようにするりとレンに問いかける。
『あなたも来る?』
どこに、とは言わなかった。それに聞かれもしなかった。
『…あぁ』と同意され、少しばかり驚く。早く帰ってこいとか、馬鹿なことを言うなって言われるかと思っていたのに。
『じゃあ位置情報を送るから』
小さく気をつけてと言って電話を切った。メッセージアプリに現在地を送信し、直ぐに既読がつく。きっと驚いているだろう、まさか隣県にいるなんて思っていなかっただろう。
来たら山ほど話したいことがある。それをひとつひとつ零れ落ちないように話すことはできるのだろうか。