友だちでいたいのに

12.まっすぐな言葉

「だって、あと一年だよ?」
 一年なんてあっという間。
 来年の今ごろは、あたしも、ユカちゃんも美咲も、受験や就職、卒業後の進路に向かって大あわてになってるだろうし。恭司だって――。

「でもまだ、オレもオマエもどうなるか分かんねーだろ。オレだって浪人するかもしれねーし。未来なんて、誰にも分かんねーんだ。いろいろ心配して距離置こうとしねーで、今はオレのそばにいてくれよ、瑠奈」
「いいの?」
 ほんとうに、あたしで?
 恭司は、大きくうなずいて。
「あぁ。つーか、オマエじゃないとダメだ」
 そのまっすぐな言葉に、あたしは思わずまた涙が出そうになった。

 だけど、つい照れてしまって。
「う、うれしいけど……おたがいスウェット同士でキスとかなくない? 全然ロマンチックじゃなかったよね」
 髪の毛もボサボサだし。目は泣きはらしてパンパンだし。
 こんなことなら、美咲見習ってちゃんと髪の毛ブローしてくればよかった。
 ユカちゃんは人気ブランドの乙女系ネグリジェ着てたし。
「今さらシチュエーションにこだわってんじゃねーよ。オマエ、そういうとこうるせーよな」
 あきれ顔の恭司に、あたしはムカッときて。
「こだわるよ! だって……はじめてだったんだし」
 そんなあたしを見て、恭司はニヤニヤしながら。
「おっ、赤くなってる。カワイイぞ、タコみたいで」
「うっ、うるさいっ!」
 
 おたがい着古したスウェット着て。
 あたしはコーラ一気飲みして、ひたすら泣いて、恭司に告白して。
 少女マンガみたいなキラキラな恋愛とはほど遠い。
 なんともみっともないやりとりだけど。
 これが、あたしたちの恋のはじまり。
 ずっと友だちだった、あたしと恭司の。
< 12 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop