友だちでいたいのに

7.コーラ

 意外な言葉に、心が大きくゆれ動く。
 なにそれ。
 なんで今日にかぎってそんなこと言うの?
 いつもみたいに怒ってくれていいのに……。

「ボーッとつっ立ってないでオマエも座れよ。寝つけねーんだろ?」
「あ……うん」
 
 あたしは、自販機でコーラを買うと恭司のとなりに座った。
 気持ちがスッキリしないときに、コーラを飲むと、ちょっぴりスカッとするんだ。
 
 中学校のころからずっといっしょだったのに、こうしてあらためて近くで見る恭司は、あたしよりずっと大人びていて。
 すぐとなりにいるのに、なんだかずっと遠くにいるように感じる。

「ふうん、コーラか」
 恭司がチラッとあたしの手元をのぞきこんだ。
「い……いいじゃん、好きなんだから! さては、夜中に飲むと太るぞって言いたいんでしょ?」
 そっぽを向くあたしに、恭司は
「いや、瑠奈って昔から悩みがあるときって、だいたいコーラ飲んでるから。なんかあったのか?」
 と、聞いてきた。

 やなヤツ。
 ふだんは忘れっぽいのに、なんでそんなこと覚えてるの?
「なんにもないったら!」
 そう言いながらコーラのプルタブに手をかけると、勢いあまって中身があふれ出てきた。
 着ていたスウェットパンツのひざあたりに、コーラがビシャッとかかる。

「あーあ、どんくせーの」
 あははっ、と恭司の笑い声。
「ほっといてよ! 別にシミ目立たないし、すぐふけば取れるし」
 ハンカチで、わしわしふいているあたしのとなりで、恭司は缶コーヒーを口にしながら。
「中学のころは、よくこうやって話してたよな。美術部のあと、缶ジュース買ってさ」
「そう……だね」
 
 あのころは、毎日恭司と話してた。他愛のないことやくだらない話ばかりしてたけど、恭司といると、いつも楽しくて、おもしろくて。
 ときどき、将来の夢についても話し合って。
 そのときから美術系の大学に進学希望だった恭司を、あたしは心から応援するって、そう約束したのに。
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