17歳の秋、君と過ごした1泊2日。
平静を装いながらも、わたしは小さな声で答える。


「そ、れはさ。みんな何系のスイーツがいいかなーって思って」


「みゆは何がいいの?」


「え、っと…バニラ、とか?優くんは?」


「僕は抹茶だってば」


あ、そうか。
そういやさっきからずっと言ってたね。


じゃなくて!


わたし何言ってるの。
いきなりバニラとか言われてもでしょ。


すると何やらニヤニヤしている優くん。


なんだろうと思ったのもつかの間、優くんが口を開く。


「バニラ好きなの?」


「ん?」


「僕今日バニラだよ」


...はい?


「じゃー僕のことも好きってことだね」


えーっと。


まさかわたしの心読みました?
てか、読まれるくらいわかりやすかったですか!?


思いもしなかった質問に恥ずかしくなったわたしは、ゆっくりと優くんから視線をそらす。


「…いや、まぁ……そう、ですね...」


うわぁ恥ずかしすぎる。


好きな人の香りにときめいたからって、食べ物の好きな味でそれを言っちゃうなんて。


「ふっ、かーわい」


ドキドキするな、わたしの心臓。


この人平気でこういうこと言うんだから。


1人でキャパオーバー寸前になっているわたしの耳に、突然委員長の声が聞こえた。


「宮野くん、みゆさん、ちょっと距離近くないですか?というか絶対先生の話聞いてなかったですよね」


わたしは驚いて委員長の方を見る。


「え!?もう先生の話終わったの?」


細いふちのメガネの奥で目を細める委員長。


「ほらやっぱり聞いてないじゃないですか」


「いーんちょー、僕は話聞いてたよ。聞いてなかったのみゆだけだよ」


「ちょ、優くんなんでいきなりそっち側!?」


そうやってわーわーと騒ぐわたし達を見て、桜は両手をパンっと鳴らす。


「ほら、今から自由行動なんだからめいいっぱい楽しむよ!」


桜の声に笑顔で頷くわたし達。


みんないい笑顔だなぁ。写真撮っとこ。


ーーーカシャッ


歩いている3人の後ろ姿を写真に収めながら思う。


どこかで優くんとのツーショット撮れたらいいな。


でも優くん、絶対に女の子と写真撮らないっていう噂があるからちょっと難しいかもしれないけど。


そんなことを思っていると、少し離れた場所で止まった3人の姿が見える。


「みゆちゃん早くー!」


「みゆー」


「みゆさん遅いですよー」


ふふふっ。


「ごめん、今行くー!」


わたしは大きな声で返事をして3人のもとへ走った。
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