17歳の秋、君と過ごした1泊2日。
好きな人と1日を一緒に過ごせるなんて、思いもしなかったなぁ。


この修学旅行が終わればきっと、わたしと優くんはただの「隣の席の人」に戻ってしまう。


それに、もうすぐ席替えがあるから優くんとの接点がなくなってしまうことは確実なわけで。


...今がずっと続けばいいのに。


優くんと同じ時間を過ごせたことが、今さらながら奇跡のように感じる。


楽しかったなぁ。


その奇跡を噛みしめていると、不意に涙が頬をつたう。


「っゆう、くん、っ」


胸が苦しい、こんな恋やめたい。


そう思うのに。








ーーーやっぱり優くんが好きだ。







片思いじゃなくて、両思いがいい。







優くんへの気持ちを再確認したわたしは、少し移動して鏡を覗いた。


うわ、さすがに泣きすぎたなー。


目も鼻も真っ赤で、頭が痛い。


ふとスマホを見ると、桜から心配するメッセージが届いていた。


『みゆちゃん、大丈夫?だいたい察しはつくから、とことん泣いておいで。あとで話聞かせてね?夜は長いからね〜』


ふふふっ。


桜らしい文章に、思わず笑みがこぼれる。


「部屋戻ろ...」


廊下を歩いて部屋のドアを開けると、わたしの胸に桜が飛び込んできて抱きしめられた。


「...やっぱりひとりで泣いてると思った」


「何も言わなくてごめんね」


「何も言わなくて、じゃなくて、今から話してくれるんでしょ?」


笑いながらそう言う桜に、わたしも笑い返しながら言う。


「...長くなるよ?」


「夜はまだ始まったばかりだけど?」


わたし達は布団にくるまって沢山のことを話した。


行きのバスでのこと、手を繋いだこと、キス未遂をされたこと。


そしてさっき脱衣所で聞いたお話も。


「うぅ、みゆちゃんつらかったねぇ」


なんでか桜が泣くから、わたしもつられて涙がこぼれる。


「つらかっ、た、よぉ、」




明日は修学旅行最終日。


泣いても笑っても優くんと過ごせる最後の時間。


何が起きてもめいいっぱい楽しむことを心に決めて、わたしは眠りについた。


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