17歳の秋、君と過ごした1泊2日。
着信音が鳴り続くスマホを優くんの指が操作する。
綺麗な指。昨日わたしが繋いだ手。
思い出すと心臓が高鳴りだす。
ほんとこれ心臓に悪い...。
そう思った瞬間。
ーーーあ。
心臓がドクンと嫌な音を立てた。
さっきまでのドキドキとは違うドキドキに支配される。
ーーー画面、見えちゃった、かも。
ーーー『海』って書いてあった...?
見るつもりなんてなかった、見たくなかった。
心臓の音が全身に響いていてうるさい。
すると、いきなり立ち上がる優くん。
え...?
わたしの脳内で、昨日聞いた女の子の話が再生される。
他の女の子のところに行っちゃうの?
「待ってて」っていうあの言葉は嘘だったの?
ーーーやだ。
いやだ。行かないで。
「優くん!」
気づくとわたしも立ち上がり、優くんの手をギュッと掴んで名前を呼んでいた。
「っ、いやだ」
「...みゆ?」
「行かないで」
「え?僕どこにも行か」
「わたしの方が優くんのこと好きだからっ、お願いだから、他の女の子のところに行かないで...!」
わたしは優くんの声を遮るように言葉を紡ぐ。
ーーー告白、しちゃった...。
勢いに任せて言ったとはいえ、さすがに勢いに任せすぎたかな。
告白したことを自覚した途端、一気に心臓の音が大きくなって顔が熱くなる。
2人の間に流れる静かな時間。
熱くなったほっぺに秋の冷たい風が当たって気持ちいい。
風向きのせいで優くんのバニラが香ってきて、その香りにまたドキッとする。
優くん何も言わないな。
ーーー言わなきゃよかったかな。
そう思った時、小さく声が聞こえた。
「ずるいよね、みゆって」
え?
優くんの言葉が理解できなくて、わたしはゆっくりと優くんと目を合わせる。
「みゆ」
「...へ?」
名前を呼ばれて優くんを見ると。
「ついてきて」
わたしの手を掴んだ優くんは歩き出した。