17歳の秋、君と過ごした1泊2日。
「いやぁ、プレイボーイで有名な宮野 優が、みゆちゃんにだけ呼び捨てなのはいつ聞いても驚くわ…」
歩きながら桜が何か言ってるけど、正直それどころじゃない。
今さらだけど、これやばいかも。
ただでさえ隣の席でいっぱいいっぱいなのに、これから2日間も一緒だなんてそんなのキャパオーバーすぎる。
「なんでみゆちゃんのことは呼び捨てなんだろうね?」
「…それわたしが1番聞きたい」
本当に聞きたい。なぜなのか。
先輩後輩関係なく女の子を呼ぶ時は必ず下の名前に「ちゃん」をつけて呼ぶのが、みんなが知っているプレイボーイ、宮野 優だった。
でもなぜかわたしの名前だけは呼び捨てで呼ぶ。
そんな女の子今までいなかったもんだから、学校中の女の子を敵に回してるわけで。
「...はぁ」
なんとも言えない感情になって思わずため息をつくと、桜が笑いながら言った。
「この修学旅行であるといいねぇ、ラブハプニング」
ラブハプニング、かぁ。
「あるかなぁ、ラブハプニング」
あるといいな。
ドラマみたいなことは起こらなくていいから、何かが起こりますように。
そう思いながら教室のドアを開けると、ホームルームを知らせるチャイムが鳴り響いた。