17歳の秋、君と過ごした1泊2日。
無事に思いが通じあったわたし達は今、観覧車に乗っている。
「めっちゃ綺麗だね、観覧車なめてた」
興味なさそうだったけど、わたしよりも外の景色に圧倒されている優くん。
幸せだなぁ。
そんな優くんを見て思わずほっぺが緩む。
「みゆ、なんか変な顔」
なっ!?
「その顔もかわいーからいいんだけどね」
「っ、もう...!」
やっぱり優くん、恋人同士になってから甘さに拍車がかかってるような。
「そういえばさ」
優くんの柔らかい声が観覧車の狭い空間に響く。
「他の女の子のところに行かないで、って、あれなんだったの?」
え。
覚えていないだろうと思っていた言葉を突然言われたわたしは軽くパニック。
「いや、それはさ、ほら優くん色んな女の子と遊んでたし?」
「...」
「...なんか色んな女の子のところに行っちゃいそうだなーって、それは嫌だなーって、感じで、」
「ほんとは?」
ギクッ。
頭が良い優くんに、わたしの苦しい言い訳が通じるわけないよなぁ...。
「ほんと、は。あの、見るつもりはなかったんだけど、スマホの画面が見えて。そこに『海』って書いてあって、優くんがわたしじゃない女の子のところに行くのは嫌だなって、それで」
「...そーゆーこと」
2人きりの空間でこれを言うのは結構恥ずかしい。
「てことはさ、僕に着信かかってきた『海』って女の子だと思ってるの?」
なにその、まるで女の子じゃないですけど、的な質問は。
「え?うん、『海ちゃん』じゃないの?」
「じゃーかけてみる?」
「へ、?」
そう言うと、『海』の画面を見せて電話ボタンをタップする優くん。
何しちゃってるの!?
「え、ねぇなにこれやだ」
女の子に電話をかけるなんて嫌すぎて、わたしは涙目で訴えた、のに。
ーーーガチャ
相手が電話に出る音が聞こえた。
するとその瞬間、優くんの右の口角が上がったのが見える。
...え?
「もしもし『海』?」
優くんの優しい声が響く。
それに応えるように、スマホからも声が聞こえた。