17歳の秋、君と過ごした1泊2日。
2日目 帰りのバスの中
あとはバスに乗って学校に着くのを待つだけ。
わたし達一行は、1泊2日の修学旅行を終えようとしていた。
クラスのみんなは疲れているのか早くも爆睡している。
もちろんわたしの班のメンバー3人も同じ。
わたしは昨日の夜泣き疲れてぐっすり寝たから、あんまり眠くないんだよね。
優くんめっちゃ寝てるなぁ。
わたしの隣には優くんが座っている。
バスに乗る時、桜がやけにニヤニヤしてるなと思ったら、桜と委員長、わたしと優くんで座れるようにしてくれていた。
座席に座る瞬間、パチンとウインクをした桜。
やっぱ持つべきものは可愛い友達だわぁ...。
あ、そうだ写真見よっと。
わたしはスマホを取り出してアルバムを開く。
最初の写真は1日目の京都での3人の後ろ姿。
このあと、みんながわたしを呼んでくれて嬉しかったなぁ。
そのあとはお蕎麦の写真。
ソフトクリームを頬張っている写真、桜がわたしにティッシュを渡している写真。
桜とおそろいで買ったヘアピンを、2人でつけてピースをしている写真もあったり。
ホテルで撮った桜との浴衣の写真。
2人で泣いてぐしゃぐしゃの顔になった記念に撮った写真も出てくる。
んー、この写真は桜との秘密にしなきゃだな。
テーマパークの看板を背景に4人で撮った写真や、お土産屋さんでちょっとふざけてる委員長の写真。
その次を指でスクロールすると、はじめて見る写真が目に飛び込んできた。
なにこの写真?
スマホの画面には、寝ているわたしとピースをして写っている優くん。
画角的に見ると、きっと優くんが撮った写真だろう。
でもこれわたし知らない...。
よく見ると、この写真の送り主は優くんであることがわかる。
ふふふっ。
ほんとにもう。
わたしはスマホを片手に持ち、腕を伸ばした。
「優くん、今起きないでね」
わたしはそう言って、シャッターボタンを押す。
ーーーカシャッ
スマホには、寝ている優くんとピースをしたわたしのツーショット。
「...仕返し成功」
そう言った時、優くんがこちらに首を傾けた。
ーーートンッ
わたしの頭に優くんの頭が触れる。
近い。
やっぱり慣れない距離の近さに、わたしの心臓は大きく高鳴る。
バニラの甘い香りにキュンとしながら、わたしも優くんに軽く身体を委ねた。
高校生活、一生に一度の修学旅行。
好きな人と過ごすことが、こんなにも楽しいだなんて。
17歳の秋に実ったわたしの恋は、まだまだはじまったばかりです。