17歳の秋、君と過ごした1泊2日。

1日目 午前、バスの中

ふわぁ…。


バスに揺られながら、ここでもあくびが止まらない。


お天気は快晴。見事な秋晴れ。


絶好の修学旅行びよりだぁ。


隣に座っている桜はいつの間に取り出したのか、もぐもぐとお菓子を食べている。


…うん。
絶好の修学旅行びよりだね。


「ん、これやばいめっちゃ美味しい。ちょっとみゆちゃん食べてみて」


窓の外へ目を向けて流れる景色を見ていたわたしは振り返る。


「……ん?」


「ふははっ、みゆちゃん眠そう。でも寝るなら今のうちだよ、今日はたくさん歩くんだから」


わたしの膝をペシペシ叩きながら笑う桜に頷く。


「うわぁたしかに…」


今日は京都の街並みをみんなで歩く予定。


ここで寝なかったら絶対にまずい。


午後を楽しむためにも寝ようかなぁ。


瞬きがだんだんとゆっくりになっていく。


「ねー、いいじゃん」


うとうとしていたわたしの耳に突然聞こえてきた声。


「やだよめんどくさい。いま席変わるのは本当にめんどくさい」


あ、これは桜の声。


「だって桜ちゃんさっきからずっとみゆの隣いるじゃん。僕もみゆの隣がいい」


この声って。


優くん?


いや…でも優くんは委員長と隣同士で、わたし達の前の席に座っているはずだし。


「ちなみにさっきからじゃなくて最初から、ね」


「ちょっとあなた達うるさいですよ。宮野くん、バスの席なんてどこでも一緒です。桜さんあなたは声が大きすぎる」


「いーんちょー、うるさい」


「いやーめちゃくちゃ同感だわ宮野 優。同感のよしみで席変わってあげよう」


「どーも」


「いやいやダメですって…ちょっと宮野くん痛いんですけど。真顔で足踏まないでもらえます?」


なんだろこの会話。
話の流れが全くわからない。


そんなことより、そろそろ眠気がピークかも…。


…まだなんか言ってる?まぁいっか…。


桜と優くんが座席を交換したことに気づかないまま、わたしは眠りについた。
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