致し方ないので、上司お持ち帰りしました
その日の歓迎会は凄かった。
部署のほとんどの女子が真白さんに群がり、真白ハーレム状態だ。他の男性社員はもちろん、面白くない。ぶつぶつと文句を吐き出しながら、酒を喉に流し込んでいる。
真白さんに女子全員が群がる中、唯一私はこちら側だ。「イケメンエリートなんて滅亡してしまえ」そう零した30歳の独身男性田中さん。「まあ、まあ、」なんてなだめている私はなにをやっているんだろう。と自分でも思う。
帰りたくて仕方がなかったが、空気を読んでしまう私は、その場の空気を壊したくなくて。結局最後まで居座り続けた。
真白さんの気を引きたい女子たちは、他の男性社員と話もろくにしない。そのつけは全部私にくるので、いつもの飲み会の倍は気を使った。
終わりの挨拶と共に、やっと帰れる。と安堵のため息が漏れた。
外の冷たくなった風を浴びながら、酒が入ったみんなは上機嫌だ。真白ハーレムを見てげんなりしていた男性社員たちも外の風を浴びた途端元気を取り戻していた。
「二次会行く人ー!」
「はーい!」
「行きまーす!」
声を高らかに上げて呼びかけに反応する人が大多数だ。早く帰りたい私はそっとその場から離れた。
誰も気づくことはないだろう。私がいないところでなんの支障もない。イケメン真白さんと若い女子社員で仲良く二次会に行ってくれ。そう心で呟きながらタクシーに乗り込んだ。