致し方ないので、上司お持ち帰りしました




「え、だって真白さん、『この生活も終わりかあー!』って言ってましたよね? だから早く出ていって欲しいんだと……」

「あー。それは……。わざわざ言うことじゃないと思ったから言わなかったんだけど。この生活が終わりっていうのは、夜な夜な見張りをする生活が終わってホッとしたって意味で……。実は、夜に泉さんのアパートの前を張ってたんだよ」

「え。もしかして、楓くんが待ち伏せしないか見張ってたんですか?!」

「心配だったんだ。元カレが泉さんに接触してこないかと。裕也に調べてもらって、本名が発覚と同時に前科もあることも分かったし。最初の頃は、裕也が見張りをしてくれたんだけど、裕也も仕事があるからさ。最近は、俺も見張りを担当する日が増えてたから、帰りが遅かったんだ。昨日直接対峙して、あそこまで言えば。もう泉さんに接触してくることはないだろ? だから、もう見張りも終わりだと思って、安心して出た言葉だったんだよ」


 夜に見張りをしてくれていたなんて……。
 真白さんが帰りが遅かった理由って、残業じゃなくて。私のアパートで楓くんを張っていたからだとは考えもしなかった。


 私は真白さんと同居を始めて、アパートに帰らないから大丈夫だと、安心し切っていた。裏で真白さんと、裕也さんが見張りをしたり、動いてくれていたなんて、知らなかった。

 
< 101 / 111 >

この作品をシェア

pagetop