致し方ないので、上司お持ち帰りしました




「ずっとキスのこと気にしてたんですか?」

「泉さんといると、ヤバくて……」

「……や、やばいとは?」

「いい年して恥ずかしいんだけど……自我が効かなそうなんだ。だから、会社で会っても……まともに顔見られなくて……」

「えっと、」 

「性欲ないし、そういう目で見ることはないって、あれだけ大口で言い切ったのに……俺、」

「発情期到来したんですか?」

「……」



 答えは返ってこなかったが、耳まで真っ赤に染まる彼の反応が答えだと思った。真白さんが女性に発情したなら、少し前進したかもしれない。


「発情期じゃないよ、」

「なんだー。違うんですか」



 声もしんなりとしてしまう。
 真白さんに発情期が到来してくれたら、少しは私にもチャンスがあったかもしれないのに。

 ほんの少し期待してしまった。期待した分のショックで気分が落ち込んでしまう。


 
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