致し方ないので、上司お持ち帰りしました



「泉さんが良ければ……これからも一緒に暮らしたい」

「いいんですか? ここに住んでいいってことですか?」

「当たり前だよ。出て行かれたら……困る」

「……っ、私も真白さんと一緒にいたいです。もう、一緒にいられないと思ってたから……嬉しいっ、」

「俺も、ずっと一緒にいたい」



 甘く優しい声が心に浸透していく。
 心が幸せで満たされて、目の奥が熱くなる。




「改めてこれからも同居。よろしくお願いします」

「違うよ。同居じゃない」

「え」

「これからは……同棲になる」

「それって……」


「俺と、正式に付き合ってください」


 はっきりと見つめられて、鼓動が激しくなる。



「わ、私。料理も下手くそだし。家事も得意じゃないし。真白さんの方が100倍女子力あるし……」

「うん?」

「性格も素直じゃなくて、可愛くないところあるし……」

「そこも好きだよ?」

 好きが溢れて止まらない。
 彼の一言が、心のど真ん中に突き刺さる。


 涙が込み上げてくる。泣きたくないのに。嬉しいはずなのに。涙が勝手に溢れてくるんだ。
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