致し方ないので、上司お持ち帰りしました
~♪
部屋に鳴り響く着信音。発生源は私のスマホだ。せっかく心機一転の気持ちで身を引き締めたのに。心はげんなりしてしまう。なぜなら相手が分かるからだ。
きっとまた楓くんからだ。あの一件で終わったはずだと思っていたのに、元カレの楓くんから何度も着信がきていた。
お金を騙し取ろうとしていたのだから、元カレと呼んでいいのかも分からない。関係はあれっきりだと思っていた。
今更なにを話すというのだろう。話すこともないので通話ボタンを押すこともない。無視し続ければそのうち諦めてくれるだろうと思い、通話ボタンを押すことなかった。
着信音が切れると、ホッとして溜息が漏れる。どうしても気になってしまうが、気にしていないふりをしてスマホから目を背けて家を出た。