致し方ないので、上司お持ち帰りしました



「秋月さん、俺のストーカーなの」

「へ? ストーカー?」

「厳密に言うと、会社の前で待ち伏せをされることが多くて……。最近は、見つからないように正面玄関じゃなくて、裏口から帰るようにしてたんだけど。まさか、家まで来るとは……」


 
 おそらく、真白さんと距離を詰めるために、偶然を装って待ち伏せをしているのだろう。

 あわよくばそのまま部屋に入り男女の関係に持ち込む――。


 普通の人ならそんな大胆な行動を考えもしないが、普段の秋月さんを思い浮かべると、やりかねないとなぜか思ってしまう。


 
「昨日もなんだ。家の前にこられたのは」

「え、昨日もですか?」

「うん。だから、昨日はビジネスホテルに泊って……」

「家に帰ってないんですか? だからスーツがシワだらけ……。なにも、ビジネスホテルに泊らなくても。秋月さんに声かけて帰ってもらえばいいじゃないですか」

「何言ってんの。秋月さんだよ?」

「へ?」

「前にも秋月さんみたいな自分に自信を持つタイプの女性に言い寄られたんだけど。大変だったんだよ。私の何がダメなの?っていうスタンスだから。普通に断っても、通じないというか……秋月さんも、なにかと文句をつけて部屋に入り込むに決まっているよ」

「あー、」


 真白さんはこの容姿だ。モテてきたのだろう。彼の言葉に苦労した過去の様子が重くのしかかっているようだった。確かに秋月さんは自分に自信を持っている。今までモテてきたので、自信もつくのだろう。


「俺が拒否したら、きっとあの場で大声で泣いて。周囲の人から白い目で見られて戸惑う俺につけこんで部屋に上がる気なんだよ」

「……」

 簡単に想像出来てしまった。あの秋月さんなら、そこまで計算済みかもしれない。深く頷いてしまう。

 
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