致し方ないので、上司お持ち帰りしました
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コンビニの外に出ると、いつの間にか降り注いでいた雨が止んでいた。歩道のあちこちに水たまりが出来て、夜の光が反射している。待ちゆく人の群れをかき分けて歩いていく。
「真白さん!」
小走りで進む足は呼びかけでピタリと止まった。そして慌てた様子で、繋がれた手をパッと離した。
彼のぬくもりが消えた右手は行き場をなくして、風がやたらと冷たく感じる。
「ご、ごめん! 俺、許可なく手を引いたりして。なにやっているんだろう。申し訳ない!」
「そんな……そこまで、真剣に謝ることじゃないですよ?」
ただ手を引いて歩いただけなのに、本気で申し訳なさそうに謝ってくるので、なんだかおかしかった。
会社での真白さんは身なりもきちんとして、仕事も出来て。頼れるエースと言われている。
なのに、目の前の彼は手を繋いだだけで、こんなにも慌てているなんて。同一人物とは思えない。