致し方ないので、上司お持ち帰りしました
「ま、真白さん? なんで真白さんが謝るんですか?」
「泉さんがストーカー被害にあっていることを知らなかったとはいえ、助けを求めてすまない」
「そ、そんな。だって真白さんだって待ち伏せされたんですから」
「全然違うよ。俺は男で、泉さんは女性でしょ?」
真剣な眼差しを向けられる。突然女性扱いされて、どくん。と心臓が跳ねた。
童貞のくせに、急に男出すの辞めて欲しい。
心の動揺を悟られないように、必死に平然を装うが、どくどくと心臓の音はうるさいままだ。
「とにかく、泉さんの家に行こう。まだ元カレがいたなら好都合。俺が話付けとくから」
きりっとした顔で淡々のいう言葉には圧が感じられた。さっきまで、あたふたしていた真白さんとは大違いだ。
確かに、楓くんがアパートの前で待ち伏せを続けているうちは、怖くて部屋に帰れそうにない。
待ち伏せされたことなど初めてで、時間差で今頃恐怖がのしかかってきた。今こうして真白さんがそばにいてくれていることで、正気を保てていた。
「大丈夫、かな」
「大丈夫。俺、真顔だと迫力あるって言われたことあるから」
確かに真白さんの端正な顔立ちは真顔だと迫力がある。それに長身なので圧も強い。楓くんは小柄で168センチくらいだったので、身長差と圧で楓くんは怯みそうな気もする。