致し方ないので、上司お持ち帰りしました
まだ待ち伏せを続けて待機しているかもしれないという恐怖を抱えながらアパートに向かう。
怖いはずなのに、隣に真白さんがいてくれるおかげで、安心感を感じられた。
木造二階建てのアパートの二階の角部屋が私の住む家だ。
きょろきょろと辺りを見渡すと、不審な人影は消えていた。楓くんは諦めて帰ったようだ。
真白さんがいてくれたとはいえ、やはり正面衝突は避けたかった。彼がいない事実に心底ほっとする。
「いないみたいです」
「そっか。ひとまず、今日はよかった」
「ありがとうございます。部屋にいきましょうか」
いざ部屋に入ろうと鍵を回すと同時に、さっきまでとは違う種類の緊張感が全身を駆け巡る。