致し方ないので、上司お持ち帰りしました
「泉さん、大丈夫?」
「真白さん?!」
イライラが積もり積もっていた私に降りてきた声は優しい声だった。時間をずらして家をでたはずなのに、もう会社についていたことに驚いた。
「ストーカーが近くにいたりしないかなって、心配ですぐ後を着いてきた」
「え、ありがとうございます。大丈夫ですよ。さすがに会社までは来ないと思います」
「そう? ならいいけど」
真白さんが私のことを心配してくれたことに驚いたが、素直にうれしかった。心の奥がじんわりとあたたかくなる。
「秋月さんとなにかあった?」
「あー。今日は、挨拶をしないことを勇気出してしっかり注意したんですけど。……嘲笑われて終わりました。私って威厳がないんですかね」
ははっと空笑いを浮かべて、気にもしていないふりをした。本当はしっかり心に傷を負っていた。秋月さんに対する苛立ちも身体全身で感じていた。
そんな私の背中を優しくぽんと叩いて、優しい声で言葉を零す。
「頑張ったよ。ちゃんと見てたから」
優しい声は心のど真ん中に突き刺さる。
真白さんの声があまりにも優しくて、今起きたできごとを説明しただけなのに、なぜか涙が込み上げてきた。