致し方ないので、上司お持ち帰りしました
いくら注意しても聞く耳も持たず、なめられているのも本当は辛い。
強がっていたけど、本当はいつも心を踏みつけられているようだった。真白さんの優しい声は私の強がりの仮面を剝がしていく。だけど、ここは会社だ。泣きたくなくて、涙を堪えるために、唇をぎゅっと噛み締めた。
「秋月さんに交際しているって伝える件だけど。俺から説明するよ」
「え、」
「早めのほうがいいと思ってさ。いいかな?」
「構わないですけど……それって二人っきりでですか?」
「そうだな。今日の仕事終わりに時間を作ってもらって……」
「ふ、二人はだめです。私も行きます」
秋月さんが真白さんと二人きりになったら、女の武器を使って誘惑するに決まっている。彼女なら手段を択ばないだろう。
経験豊富な男性なら回避できるかもしれないが、真白さんは童貞だ。誘惑に負けてしまうかもしれない。
ダメ。
真白さんと秋月さんを、2人きりにしたくない!
「絶対、私もいきます!」
心配で仕方がない私は前のめりで告げた。真白さんは私の気迫に驚きながらも納得したようで首を縦に振った。