致し方ないので、上司お持ち帰りしました
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「泉さん♪ 私、真白さんに今日誘われました! 私のほうからアプローチするまでもなかったです」
給湯室でコーヒーを入れていると、秋月さんは身体をくねらせながら、弾む声で声高らかに報告にきた。なんて返せばいいのか分からずに言葉に詰まる。
「あー。それ、私も行くんだ」
「はあ? なんでですか?」
一瞬で陽気だった声色が変わった。高圧的に口調になり、イラついているのが感じ取れた。その気迫に負けじと言い返す。
「そ、それは……。仕事が終わってから、ちゃんと話すから」
「こなくていいんですけど!」
さらに強い口調で返された。
すごく嫌そうな顔で言い放つ言葉は悪意しか感じない。
「えっと、秋月さんの気持ちはわかっているんだけど……」
「分かっているなら、空気読んでこないでもらえます?」
「いや、だけど……」
「邪魔です! って言ってんの!」
怒鳴り声で間髪入れずに言い返される言葉に、心が押しつぶされていく。後輩のはずなのに、目の前で睨みつけてくる彼女は、完全に私を敵対視しているのが分かる。