致し方ないので、上司お持ち帰りしました


 ♢



「泉さん♪ 私、真白さんに今日誘われました! 私のほうからアプローチするまでもなかったです」


 給湯室でコーヒーを入れていると、秋月さんは身体をくねらせながら、弾む声で声高らかに報告にきた。なんて返せばいいのか分からずに言葉に詰まる。


「あー。それ、私も行くんだ」

「はあ? なんでですか?」

 
 一瞬で陽気だった声色が変わった。高圧的に口調になり、イラついているのが感じ取れた。その気迫に負けじと言い返す。



「そ、それは……。仕事が終わってから、ちゃんと話すから」

「こなくていいんですけど!」


 さらに強い口調で返された。
 すごく嫌そうな顔で言い放つ言葉は悪意しか感じない。



「えっと、秋月さんの気持ちはわかっているんだけど……」

「分かっているなら、空気読んでこないでもらえます?」

「いや、だけど……」

「邪魔です! って言ってんの!」



 怒鳴り声で間髪入れずに言い返される言葉に、心が押しつぶされていく。後輩のはずなのに、目の前で睨みつけてくる彼女は、完全に私を敵対視しているのが分かる。



 
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