致し方ないので、上司お持ち帰りしました




 同居を開始してから訪れた休日。

 私のアパートから大きな家具を真白さんの家に移動する日だ。


 引っ越し業者にお願いしようと思っていたが、真白さんの友達が手伝ってくれるというので、甘えることにした。正直引っ越し代は馬鹿にならない。お金に余裕がない私にとっては有難いお話だった。



「はじめましてー! 真白の高校時代の友人の深沢裕也(ふかざわゆうや)です! よろしくー!」


 童貞の真白さんの友達はどんな人かと思っていたが、想像を超えてきた。真面目な真白さんとは正反対に見た目がちゃらい。緩い喋り方で、終始テンションが高い。


「よ、宜しくお願いします。今日は、お手伝いいただきありがとうございます」

「いいよー! 真白の彼女なんだもんねー。あ、偽りの彼女か! 最初聞いたときは、やっと女に興味持ったかと思って安心したのに、よくよく聞けば偽物の彼女とかって! 漫画かよ!」


 裕也さんは早口でマシンガントークを繰り広げるので呆気に取られてしまった。こちらが言葉を発するタイミングがない。


「泉さん、ごめん。これ、うるさくてさ」

「おいー! これはないだろ?」

「ちょ、お前。うるさいんだよ。泉さん、驚いているだろ?」


 じゃれ合う2人をみて微笑ましかった。

 真白さんも友達には「お前」とか言うんだ。
 会社でみるエリート営業マンの姿とも、家で見るプライベートなまったりとした真白さんとも。どちらとも違った一面が見れて嬉しい。  



 
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