致し方ないので、上司お持ち帰りしました



「真白さん、どうしてここまでしてくれるんですか?」

「え、ここまでって? 俺。なにかやらかしちゃってる?」


 きょとんと目を丸くさせて戸惑っている様子を見ると、どうやら魂胆があっての優しさではないらしい。
 


「ご飯を作ってくれたり。髪の毛を乾かしてくれたり。こんなに甘やかされたら、私廃人になりそうです。普通は彼氏でもここまでしないですよ?」

「そうなの?」

「そうですよ。普通はしませんよ」

「ごめん。俺、女性と付き合ったことないから普通が分からなくて。なんか泉さんにはしてあげたい衝動に駆られてしまって……」



 真白さんの言葉が心にささる。

 どういう意味だろう。伏し目がちに言われた言葉に、期待が膨らんでしまう。



「それって、どういう意味ですか?」

「えっと、」

「私にしてあげたいって……どういう意味ですか?」



 自分から聞いておいて、答えを聞くのが怖い。「泉さんにはしてあげたい衝動に駆られる」なんて言われたら、どうしたって期待してしまう。



「ちょっとだけ、そうかなって思う心緒があるんだけど……それが正しいのか判断できなくて……」


 彼もまっすぐに見つめてくるので、胸がドキドキと高鳴る――。  



 もしかして、恋心をいだいてくれている?!
 童貞だから、恋心に気づいていないのかもしれない。期待が膨らんでいく。


「た、正しいと思います! 真白さんが今感じていること。正しいです」


 期待を瞳に込めて見つめ返した。


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