致し方ないので、上司お持ち帰りしました

 



よどんだ空気を変えるように、真白さんはパンっと両手を叩いた。その音に周囲のみんなは顔を上げた。

 
「急いで、書類をつくろう。分担すれば午後一に間に合うかもしれない」


 不穏な空気がガラリと変わった。みんな仕事モードに切り替わる。


「私も手伝います」

「お、俺も」


 騒動を見ていた社員たちは、みんな協力をしてくれた。真白さんは瞬時に的確に割り振りを行い、なんとか無事間に合うことができた。


 エリートと呼ばれるだけあって、真白さんは仕事ができる。


 なんとか、お客様に影響が出ずに事なきを得た。

 
「みなさん、ご迷惑おかけしました」


 営業部内に響き渡るように声を張って頭を下げた。

 秋月さんが仕組んだこととはいえ、私も関係者だ。迷惑をかけてしまったことには変わりはない。

「大丈夫だよ。疑って……ごめんなさい」

「事情知らなくてごめんね、」


 頭を下げ続ける私に優しい言葉が降ってきた。みんなの優しさに泣きそうになる。仕事に支障が出なくて本当によかった。


 そしてなにより。真白さんが、私を信じてくれてよかった。彼が秋月さんではなく、私の味方をしてくれたことが心底嬉しい。


 ちらりと真白さんに視線を向けると優しい笑みを浮かべていた。なぜか泣きたくなった。


 
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