致し方ないので、上司お持ち帰りしました
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この日は、中学生のころから親友のめぐみとランチに来ていた。
めぐみは祖母の予言のことも知っているし、予言された後男運が悪くて騙されたことも知っている。真白さんの許可を得て、めぐみにだけは今の現状を説明していた。
「で、で。どうなの? 童貞上司との同居生活は?」
ニヤニヤと笑みを浮かべて意気揚々と聞いてくる。真白さんが童貞だということも説明済みだ。
「それが……。はあ、」
「どうしたの。大きなため息はいて」
ため息だってつきたくなってしまう。だって、真白さんが私のことを女性としてみていないのが、ひしひしと伝わってくるんだもん。
好きだと自覚した今。真白さんが女性嫌いという事実が、重くのしかかっていた。
「実は……お風呂上がりにわざとバスタオルのままリビングに行ったんだ。湯上りの肌をみて、少しは意識してくれるかなって。定番だけど、魂胆があったわけよ」
「ほうほう」
「そしたらどんな反応したと思う? 『服持って行くの忘れた? 何必要? クローゼットから持ってこようか?』って淡々と言われたんだよ」
「涼香の裸を見ても、反応なかったと」
「こっちを見ないように気を遣ってくれてたような気もするけど……もっと顔を真っ赤にさせて中坊のような反応だと思ったからさ」
「……中坊って」
職場の同僚にも言えない相談を嘆いた。
髪を乾かしてくれる時も。シャンプーの匂いが香って、普通の男ならムラッとするところだと思う。
なのに、真白さんは平然と作業をこなすかのようにしている。
分かっていたことなのに女と見られていないことが、こんなに悲しいなんて。