致し方ないので、上司お持ち帰りしました
「ねー! どうしたらいいと思う?」
「どうしたらって、童貞上司は女性が苦手なんでしょ? 勝算低くない?」
「それは重々承知だったんだけどさ。髪の毛乾かしてくれたり。料理作ってくれたり。お弁当もかわいいの作ってくれるんだよ? 好きにならないようにしてても沼るよー」
「そんなことしてくれんの? 童貞って」
「もう! 童貞だからじゃないよー。真白さんが優しいんだよ」
「なんかさ。今まで涼香が付き合ってきた男って、最低な奴ばかりだったじゃん?」
「うん、」
「童貞上司が料理上手とか優しいことはもちろんだけど。涼香が恋しているのが伝わってきて嬉しいよ」
「そ、そう? 自分じゃ分からないな……」
「だって、元カレとなにかあっても、こんな風に相談することなんてなかったじゃん。それに、童貞上司と同居前より、肌つやが良くなってる気がする」
「え、そう?」
肌つやが良い理由は、思い当たる節が多かった。朝晩と栄養たっぷりご飯を食べて。きれいなお風呂で毎日入浴。心身ともに満たされて、深い眠りにつく。一人暮らしをしていた時の生活より、遥かに良い暮らしをしていた。
久しぶりに親友と過ごした時間は有意義なものだった。心にたまっていたモヤモヤが消えたような気がする。