致し方ないので、上司お持ち帰りしました





「ただいまー」




 帰宅すると玄関に真白さんの靴があった。
 リビングにいるかなと思いながらドアを開けると、思いがけないものが視界に入る。


 予想もしていなかった光景に、体が硬直してしまう。



「……え! は、はだか?」




 バスタオルを下半身に巻いて大事なところは隠されていたが、上半身は解放されていた。


 どくん。心臓が跳ねて、うるさく鼓動する。
 意外にも筋肉質は身体に、どうしたって反応してしまう。



「わわ! 泉さん、おかえり! ……じゃなくて。ご、ごめん! ランニングして汗かいたからシャワー浴びたんだ! き、着替えてくる!」


 顔を背けた私に言い残して、足早に自室に消えていった。


 目に焼き付いた真白さんの肉体美が離れてはくれない。脳裏に浮かんだまま、私の心臓も高鳴り続けてた。


 真白さんに男を感じないように、意識して制御していたのに……。視覚から男を見せつけられたら、心の動揺が止まってはくれない。



 私はこんなに、ドキドキするのに。
 真白さんは、私の肌を見ても、平然としていたなんて。

 改めて、恋愛対象に見られていないことに、胸が苦しかった。

 

 



 
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