致し方ないので、上司お持ち帰りしました
♢
「ただいまー」
帰宅すると玄関に真白さんの靴があった。
リビングにいるかなと思いながらドアを開けると、思いがけないものが視界に入る。
予想もしていなかった光景に、体が硬直してしまう。
「……え! は、はだか?」
バスタオルを下半身に巻いて大事なところは隠されていたが、上半身は解放されていた。
どくん。心臓が跳ねて、うるさく鼓動する。
意外にも筋肉質は身体に、どうしたって反応してしまう。
「わわ! 泉さん、おかえり! ……じゃなくて。ご、ごめん! ランニングして汗かいたからシャワー浴びたんだ! き、着替えてくる!」
顔を背けた私に言い残して、足早に自室に消えていった。
目に焼き付いた真白さんの肉体美が離れてはくれない。脳裏に浮かんだまま、私の心臓も高鳴り続けてた。
真白さんに男を感じないように、意識して制御していたのに……。視覚から男を見せつけられたら、心の動揺が止まってはくれない。
私はこんなに、ドキドキするのに。
真白さんは、私の肌を見ても、平然としていたなんて。
改めて、恋愛対象に見られていないことに、胸が苦しかった。