致し方ないので、上司お持ち帰りしました
♢
「あ、真白さん。ドラマそろそろはじまりますよ? 前回も見てましたよね?」
「見る見るー!」
ソファでテレビを見ていた私は真白さんに声をかけた。先週も一緒に見たドラマの二話が放送される時間になったからだ。
不倫ものでドロドロなドラマだけど、意外にも真白さんはこういうドラマが好きらしい。
呼びかけに反応した真白さんは、あたりまえのようにすぐ隣に腰をおろした。最初のころは妙に距離があったが、今ではソファに並んで座ることが日常になっていた。隣で食い入るように見つめている。
昼間に見た真白さんの裸が脳裏にチラつく。いつもは緊張しない何気ない日常にもドキドキしていた。真白さんに悟られないように、必死に冷静を装い続ける。
「これはドロドロなドラマですけど、さわやかな恋愛ドラマは見ないんですか?」
「うん? たまに見るよ。でも学園ドラマは見れないかも。なんかこの歳になると気恥ずかしくて」
「私は逆に見ます! 若さと甘酸っぱさを吸収して、養分してます!」
「あははっ。養分ってなに」
会社での真白さんは、キリッとしてたまにしか笑わない印象だったが、家にいる時の真白さんは笑い上戸でもあった。目をクシャっとさせて笑う笑顔がとても好きだった。